エジプト国ナイルデルタ地域におけるディストリビュータの運用実態調査

摘要

エジプトナイルデルタのかhがい農業は5000年以上の長い歴史を持ち，そしていつの時代も必要な水は常にナイル川によって賄われてきた。 エジプトの人口は現在も増加基調にあり，さらに都市化の波の中で水需要は増加し続けているが，ナイルデルタで利用可能な水資源の開発量は既に限界に達している。 将来に向けて限られた水資源の効率的な利用方策の確立が急務であり（渡辺ら，1994），エジプト政府は先進国の援助を受けながら既耕地における用水利用の効率化に関するプロジェクトを進めてきた。 既存のプロジェクトとしては，エジプト水利用及び管理プロジェクト（EWUP；the Egypt Water Use and Management Project）による調査や，引き続いて実施された潅漑改善討画（IIP；Irrigation Improvement Project）が代表的なものである（国際協力事業団国際協力部，1997）。 これらはいずれも，米国国際開発庁（USAID；United States Agency for International Development）の技術、資金協力を得て進められたものである。 ところが，IIP事業は，農民間の合意形成が不十分なまま実施されてきたことなどから，実際に事業を進める中で，水利施設の管理や農民組織等に関する様々な問題が生じていることが明らかとなり，日本はこれらの改善のため，2000年から5ケ年討画（実際には更に2年間の延長）で，JICA（現（独）国際協力機構）によるナイルデルタ水管理改善計画（WMIP；Water Management Improvement Project in the Nile Delta）を立ち上げた。 本プロジエクトでは農民参加に基づいたIIP事業の効率的かつ効果的な改善手法を，プロジェクトエリアであるバハル、ヌール（Bahr El Nour）地区で実証することを目標として，用水路管理，農民水利組織，圃場水管理の分野で活動が行われている。