SiCサセプターを用いた家庭用電子レンジでのBi系銅酸化物超伝導体の急速な合成

摘要

原料粉を全て酸化物に変えることにより，固相法における仮焼成（810°C，20hで脱炭酸）工程の省略が可能となり，サセプターを使用して焼結すると，1回のマイクロ波照射でBi2212相の支配的な超伝導体を作製できた．また言サセプターによる外部加熱とマイクロ波加熱を同時に用いた試料の焼結により，電気炉加熱とほぼ同等の超伝導体が作製できた．電子レンジのマイクロ波加熱で得た試料は，試料内部の空隙が大きく非常に脆い試料となるが，一度加熱した試料を粉砕し再び加熱することにより未反応の原料粉の反応を促し，焼き固められ強固な試料が作製できた．以上から，家庭用電子レンジによるBi系銅酸化物超伝導体の合成において，CuOの直接発熱にサセプターによる外部加熱プロセスを加えることで，試料の部分的な溶融を可能とし，より少ない工程で高い超伝導特性を持つ試料の合成ができる．しかし，同時に，結晶内の原料粉の未反応物や，焼結体としての脆さがあるため，より良質な超伝導試料合成には，工業用マイクロ波照射炉で試みた中間粉砕混合や長時間焼成で作製することが必要であることが今回の実験から見出された．