開心術による心臓再同期療法が有効であった心房細動と弁閉鎖不全症を伴う拡張型心筋症

摘要

症例は77歳，男性.X年10月1日より呼吸困難感ぁり，10月3日循環器内科外来 を受診した.胸部X線写真にて肺うつ血を認め，心エコー検査上，左室駆出率（EF)は 25%と低下しdyssynchronyを伴う，うつ血性心不全の診断にて緊急入院となった.入院 時心電図は心房細動，HR70/分，完全左脚ブロックであった.心エコー上，LVDd/Ds75 mm/61 mmと心拡大著明，％FS19%， EF 25%.左室は拡張し，びまh性に壁運動低下， dyssynchronyを認めた.著明な心拡大のためtetheringによる重度僧帽弁閉鎖不全症を 認めた.NYHA HI度であり僧帽弁形成術もしくは僧帽弁置換術のみではdyssynchronyは 改善しないと判断し，開心術にて僧帽弁置換術，心房細動に対する肺静脈隔離術および心 筋電極によるCRT-D植込み術を併せて施行する方針となった.術後に駆出率の改善，自 覚症状の改善(NYHA HI度からII度へ）を得ることができた.重症拡張型心筋症の僧帽弁 閉鎖不全症を合併した症例において，同時に心筋電極による心臓再同期療法を施行し，心 機能改善を認めた症例を経験した.開心術による心筋電極を用いた心臓再同期療法は，症 例を選択すれば治療の選択肢となり得ると考えられた.