抗加齢医学の標的としての腎臓

摘要

高齢者社会の本格的な到来を迎え，高齡者が例外的 な存在ではなく，むしろ診療現場の主体となりつつあ る。腎機能の低下とともに，平均寿命は短縮し，個体 レベルでの老化変化が加速することも示されている。 従来，その原因は尿毒素等の加齢促進因子の蓄積によ ると理解されたきた。一方，Klotho遺伝子の発現の主座が腎遠位尿細管で あり，Klotho遺伝子の欠落?機能低下が個体レベルで 諸臓器での加齢変化を加速させることが示された。賢 産生ホルモンであるerythropoietin不足による貧血を 「腎性貧血」と呼称する。Klothoの発見は，腎で産生 される内因性抗加齢物質の作用不足により，「賢性老 化（renal senescence)」とも呼ぶべき病態が招来さ れることを示唆するものである。腎保護により加齢変化を減速せしめることも十分に 期待できるわけである。