腸内細菌と老化

摘要

腸内細菌は従属栄養細菌に属し，宿主から糖質を得 て，自らの体成分やエネルギーに変えている。人は腸 内細菌の産生する短鎖脂肪酸からエネルギーを得てい る。胎児はほぼ無菌であり，生後母体，環境から腸内 細菌を獲得していく。哺乳後，一旦ビフィズス菌が增 加するが，その後，食事摂取により急速に他の腸内細 菌が増殖してくる。数百種類の細荫のうち，ファーミ キュウテス門，パクテロイデス門，アクチノバクテリ ア門，プロテオバクテリア門が多数をしめ，2歳から 70歳ぐらいまで大きな変化がないが，老化に従って， 多様性が減弱したり，個体間の差が大きくなる。百寿 者や超百寿者では特徴的な腸内細菌の増減がみられ， 肥満防止作用を持つクリステンセレラシアが増加して くる。中年のキリフィッシュの腸内細菌を若いキリ フィッシュの腸内細菌に置き換えると何と寿命が延長 した。現在炎症性腸疾患をはじめ，肥満等，様々な疾 患で糞便移植が始まっている。