多臓器連関としての老化

摘要

老化とは，加齢とともに個体の生理機能が低下し， その結果外からの様々なストレスに対する適応能力が 低下した状態を示す。肥満?糖尿病や心不全は加齢と 共に増加する老化関連疾患であるが，その病態に細胞 老化を介した機序が中心的役割を担うことがわかって きた。p53はがh抑制遺伝子として広く知られてい るが，今日，細胞老化促進因子としての側面が注目さ れている。肥満時には内臓脂肪の炎症により全身のイ ンスリン抵抗性が生じるが，p53を介した内臓脂肪 老イヒが主要な分子機序であることが明らかとなった。 また，心不全時にもp53シグナルを介した内臓脂肪 炎症が生じ，全身のインスリン抵抗性により心機能 が低下することがわかった。左室圧負荷時には，p53 シグナルによる細胞老化が血管内皮細胞及び骨髄細胞 に生じ，慢性炎症が心臓で惹起されることもわかった。 p53シグナルを介した細胞老化の抑制により，次世 代の肥満，糖尿病および心不全治療法を開発できる可 能性が高い。