【タンパク質品質管理のためのエレクトロンダイナミクス】

摘要

小胞体は核周囲を取り囲む網目状のオルガネラである。小胞体には,分泌タンパク質や膜タンパク質のフオールディングの場としての役割があり,そのため多種多様な分子シャぺ口ンや酸化還元酵素が存在し,フオールディングには適した環境である。さらに小胞体内腔のレドックス環境は,サイトゾルと比較して酸化的とされ,酸化的環境はタンパク質の酸化的フォールディングにも有利な環境と言える。PDI-Ero1を中心とした酸化力スケードの詳細が明らかにされる一方,タンパク質品質管理に対する還元反応の意義は明らかにされていなかった。我々はこの酸化的環境中でジスルフィド還元酵素として働く ERdj5を同定し,その還元力が小胞体の恒常性維持に深く関与することを明らかにした。これまで酸化反応の場としてのみ考えられてきた小胞体において,還元反応の意義を明らかにすることは,小胞体のエレクトロンダイナミクスの全容を理解する重要な足掛かりとなるだろう。