【ATLに対するTax標的樹状細胞ワクチン】

摘要

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は,ヒ卜T細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)感染者に発症する末梢性T細胞腫瘍で,免疫不全と抗がh剤抵抗性から,従来型の多剤併用化学療法のみでは再発率が高く,全生存期間は約一年と極めて予後が不良である。近年,分子標的薬の開発や造血幹細胞移植療法の発展によつてATLの治療成績は向上しているが,治癒に至る症例は未だに限られ,またこれらの治療による重篤な副作用も無視できない。我々は,ATLの寛解維持療法としてHTLV-1のウイルス抗原であるTaxを標的とした樹状細胞ワクチン療法の第I相臨床試験を実施し画期的な臨床効果を確認した。これらの症例では,持続的な抗腫瘍免疫による長期の無治療期間,良好なQOLが得られており,一部には治癒が示唆される症例も認められた。本項では,HTLV-1ウイルス抗原を標的にした樹状細胞ワクチン療法の現況と可能性について紹介する。