ポラプレジンクと味覚障害

摘要

ポラプレジンクは亜鉛とL-カルノシンの錯体であり，現在，胃潰瘍治療薬として臨床で広く使用されている亜鉛製剤である。近年，亜鉛製剤は亜鉛補充の観点から慢性的な生体内亜鉛の低下に起因する様々な疾患に対して臨床的有効性が期待されている。特に味覚障害は亜鉛欠乏が関係する代表的な疾患の一つとして広く知られている。これまでの基礎研究や臨床研究から，味覚障害の発症には一部，慢性的な生体内亜鉛の低下が関与すると考えられ，ポラプレジンクが味覚障害患者に対して有効であることも報告されている。本稿では亜鉛欠乏ラットの味覚異常モデルに対するポラプレジンクの改善効果を紹介し，その作用機序としてポラプレジンク由来亜鉛の舌上皮への移行による舌上皮亜鉛含量の改善作用や味蕾細胞の増殖能?舌の病理組織学的変化に対する改善作用を概説する。さらに味覚障害患者を用いた最新の臨床試験の成績も紹介する。