サルコぺニアに対する血流制限下トレーニング

摘要

骨格筋量は，30歳を超えると10年毎に約3?5%低下し，その減少率は60歳を超えると極めて大きくなる。この加齢性筋肉減少症（サルコぺニア）は，転倒による怪我や骨折の危険性を増加させ，身体的自立の妨げや寝たきりへと進行する可能性が高く，高齢社会における疾病予防の観点から大きな健康問題とされる。サルコぺニア対策として，古くから高重量負荷による筋力卜レーニングの有効性が確認され，各場面で利用されてきた。一方，高重量負荷は，高齢者の運動器や循環器に障害をもたらす危険性も含hでいる。そのため，近年は高重量負荷を利用せずに骨格筋量や筋機能を改善する卜レーニング法の効果や安全性が注目されてきた。私の研究グル一プでは，主に低重量負荷を用いた血流制限下の筋力卜レーニング法を利用し，サルコぺニア対策としての効果や臨床応用の研究を進めてきた。本稿では，これまでの研究を踏まえ，サルコぺニア予防?治療法としての有用性について概説する。