染色体接着因子コヒーシンによるシナプス形成制御機構

摘要

発生期，多様な遺伝子の発現が変動し，中枢神経回路形成を制御する。このとき，特定のある遺伝子が独立した発現変動を示すのではなぐ様々な遺伝子の発現がダイナミックに変動する。従って，ゲノム上で複数の遺伝子発現を統率する仕組みについて理解することが，中枢神経回路形成のメカニズムを解明する上で重要であると考えられる。包括的に遺伝子発現制御機構として，エピジェネティクス制御機構が着目されている。実際に,様々な神経発達障害の病態モデルで，ヒストンァセチル化やDNAメチル化などのエピゲノム修飾の異常が報告されている。また，近年の次世代シーケンサーなどによる解析技術の発展により，三次元的なゲノムの核内配置や，時間経過に伴ったゲノム高次構造の変動が，遺伝子転写制御に重要であるとわかってきた。本稿では，ゲノム高次構造を介したシナプス形成制御のメカニズムについて概說する。