【鉄代謝障害とNASH】

摘要

本邦においては，戦後，急激に肥満人口が増加，それに合わせてメタボリック症候群の肝臓における表現型である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)も増加し，現在では肝硬変や肝癌の主要な原因の一つとなっている。 NASHの発症進展には酸化ストレスが重要であるが，その発生源として鉄過剰が注目されている。NASHにおいては高頻度に肝臓を中心とする鉄過剰状態を認める。これが酸化ストレスを誘導し，肝脂肪化やインスリン抵抗性とのcrosstalkを介して，肝病態のみならず動脈硬化の進展にも悪影響を及ぼしている。現在， NASHに対する確立された薬物療法は存在しないが，瀉血や鉄制限食による除鉄療法は，肝機能やインスリン抵抗性を改善させる可能性が指摘されている。鉄過剰の原因機序の究明を含め，今後，NASH発症進展の根本的な病態および病因の解明が進み，より有効性の高い治療法の開発が行われることを期待したい。