学会、研究会の講演、論文から

摘要

醤油麹菌Aspergillusはアフラトキシン生産菌A. flavusやA. parasiticusとともにFlavi節に属し、互いに近縁である。 近年アフラトキシン生合成経路の分子生物学的研究が急速に進展した。 その結果、アフラトキシン生合成遺伝子はクラスターを形成しており、その中にあるaflR遺伝子は他のアフラトキシン生合成関連遺伝子の発現における正の制御因子であることから明らかになっている。 これらの知見に基づき、醤油麹菌の安全性を確認するために、醤油麹菌におけるアフラトキシン非生産性の研究を行つた。 まずアフラトキシン生合成経路の各ステップの反応を触媒する酵素活性を測定したが、検出できなかった。また、ノーザン解析で転写因子aflRをはじめとするアフラトキシン生合成遺伝子も転写されていないことを確認した。 さらに、A．sojaeのaflR遺伝子に種特異的なナンセンス変異のあることを見出した。 これらの結果から醤油麹菌Aspergillus sojaeのアフラトキシン生合成系には、少なくともaflRまでの信号伝達及びaflR自身の変異という2つの欠損があるために、アフラトキシンを生産しないことが明らかとなった。