果樹園生態系における炭素シーケストレーション機能の評価

摘要

大気CO_2濃度の増加に伴う地球（全球）レベルの温暖化は，もっとも重要な地球環境問題の1つであり，その間越解決に当たって，大気CO_2濃度の変動に対する生態系の炭素動態の影響を解明することは，国際的に重要な研究課題の1つといえる．また，全球レベルで，人為起源の炭素放出量の11％に相当する0.8 Pg y~(-1)の炭素が，収穫によって農地土壌から毎年失われている（Schlesinger and Andrews 2000）．さらに，農地は陸域面積（約15×10~9 ha）の約10％（1.58×10~9 ha）を占めている（FAO 2002，Whittaker 1975）．これらのことから，農地生態系は全球の炭素動態に大きな影響をもつ生態系とみなすことができる．しかし自然生態系に比べて，農地生態系の炭素循環に関する研究は少なく（Buyanovsky and Wagner 1998），農地生態系と大気とのCO_2（炭素）交換の詳細は充分に解明されていない．畑地での研究例を除くと，農地における炭素循環研究は著しく少ないかまたは皆無であり，さらに多くの種類の農地生態系における炭素循環が研究されなければならない．