アジア諸国におけるOSHMSとベストプラクティス普及への期待～日本経団連国際協力センター（NICC）のアジア経営者団体との共同研究事業，国際労働財団（JILAF）による労働者参加型安全衛生トレーニング現地プロジェクトの経験から～

摘要

アジアの全域にわたって工業化が急速に進展している。 経済のグローバル化にともなって，多くの国や地域で就業構造が多様化し，産業現場の安全·健康リスクがさまざまな職場に広がり，大きな関心を集めている。 危険有害で厳しい予防措置を要する作業も，工業国から多くの開発途上国へ，また各業種の中小企業へと移転が進み，新しい生産手段の導入による複合的な安全·健康リスクが，多くの産業で問題になっている。 古典的な職業病や労働災害（たとえば，腰痛等の筋骨格系障害，有害化学物質による中毒，生産機械による巻き込まれ事故，建設現場の墜落·転落事故など）対策に加えて，人間工学，労働時間編成，ストレス対策，作業編成，外国人労働者への対応等，職場の安全衛生リスクの多様化が顕著である。 ビジネスにおける安全衛生の位置づけも変化しており，安全衛生は人間の安全保障の一つとして，企業にとってのCSRの一部として，各国の社会·経済開発においてその重要性が増している。