どうすれば日本の競争力は高まるのか－TLOを核とした新たな産学の連携

摘要

企業の研究領域が狭まっている。 市場構造が「生産者主権」から「消費者主権」に変わったためだ。かつては，生産者がいいものをつくれば，同一商品を大量に売れる時代だった。 今は消費者がモノを選ぶ時代であり，その結果，市場ニーズが多様化し，変化の速度を増している。 このため，企業の研究環境も大きく変化した。製品開発に使える期間が短くなる一方，製品が陳腐化する速度が早くなっている。 1998年に経済団体連合会がまとめた報告書によれば，ここ10年間で，全事業分野平均の開発リードタイムは4.3年から3年に，製品ライフサイクルは11.1年から8.1年に短縮されている。 4年あるいは5年以上かかる長期の研究は，有望なテーマであっても企業では取り租みにくい状況が生まれており，これまでのように，自社の戦略額域の研究に加え，未踏領域の長期的な研究を担うことが困難になっている。