備投資変動のミクロ的構造－上場企業データからみた1980年代以降の定型化された事実

摘要

日本経済は，米国経済の減速懸念やIT需給改善の頭打ち観測に株価下落も加わり，循環的な回復シナリオに早くも黄信号が灯っている。このようななか，産業空洞化への懸念や経済活性化の観点から，国内設備投資の今後の動向や政策的対応の必要性について大いに関心が高まっているが，その基礎的情報となるべき設備投資低迷のメカニズムについては，未だ十分に解明されていない部分が残されている。 本稿では，このうち企業間の多様性と行動変化の問題に焦点を合わせ，1980年代以降の上場企業データをもとに，マクロ的な設備投資低迷のミクロ的構造を実証的に明らかにしようとするものである。