恩師松浦哲也先生との思い出

摘要

岩手大学工学部に入学した2006年，「俺の子供が可愛い」 と我が子の成長報告から始まる松浦哲也先生の講義は今で も懐かしく覚えています。先生の穏やかでュニー クな人柄 は多くの学生から愛されており.人気の教員でした。今で も大学の同期と集まる度.必ずといっていいほど先生のこ とが話題に出てきます。少林寺でのご活躍を含めて多くの 学生に尊敬されており，私自身も，ご指導いただいている 中で.信頼し，尊敬できる恩師に巡り合うことができまし たことを，とても幸運に思っています。私は学部3年の後 期から博士課程修了に至るまでの6年半，松浦哲也先生の もとで，主に線虫やげつ歯類を用いて研究を行って参りま した。体長約1mmの線虫C. etegawsは全てのゲノム配列 が明らかとされており，わずか302個の神経細胞で様々な 行動や学習を行うことができ，この動物を使って得られる 研究結果はヒトの生体メカニズムを明らかにする上で重要 なモデルである，ということを松浦先生の講義でお聞きし てから「線虫」という動物に興味を持ち.この動物について もっと知りたいと思い，先生の研究室への配属を希望いた しました。仮配属期間中に受けた先生の印象は，普段の講 義中の先生同様，とても穏やかで明るぐ優しい先生でした。仮配属期間の3年後期の間に線虫の嗅覚順応について の研究や，げっ歯類を用いたストレス評価の研究に携わら せていただいたことで.松浦先生のご指導のもと，修士課 程に進み，さらに研究を続けたいと思うようになりました。 主に神経行動学や分子遺伝学.薬理学等を扱う研究内容で したが，これらの事前の知識は大学の授業レベルでしかな かったため，ほぼ一から全て松浦先生にご指導をいただき ました。松浦先生は，私たち学生にとても理解しやすい内 容で.論文や実験を介しながら実用的な専門用語や学識的 なことをご教授くださりました。先生の丁寧な指導内容は. 他の研究室の学生からも羨ましがられるほどで，自分たち はとても恵まれていると実感したものです。研究室の学生 が増え，私から後輩に実験の基礎的なことを教えることが 多くなつたとき，よく先生のご指導の仕方を思い出しなが ら.丁寧に伝えることを意識して行っていました。器用で 綺麗好きな先生は.実験室の至る所や物や，資料などの細 かい部分でさえきつちりと整理整頓されており，「美しさ」 を大事にされていました。