光で匂いを感じてしまうカイコガ

摘要

私は，神崎亮平先生の研究室に博士課程の大学院生として所属し，カイコガはombyx mori)を実験動物として用 いて「遺伝子導入力ィコガを用いた神経活動制御とネット ワーク機構の解析」というテーマで研究させていただいて おります。雄のカイコガは同種雌から放出される性フエ口 モンに反応し特徴的なプログラム行動を発現します。この ような感覚入力と行動出力の明確な対応は，神経行動学モ デルとして適しています。空気中を漂う性フヱロモン分子 は，匂いとして雄力ィコガ触角上の嗅受容細胞で受容され た後に触角葉と呼ばれる一次中枢神経ネットワークで処理 を受けます。カイコガの性フェロモンに対する感受性は， わずか170分子の性フヱロモンがあれば行動が起きるほど の超高感度なものであり，まさに驚異的検出メカニズムで あるといえるのですが，興味深いことにその神経基盤はま だよく分かっていません。雄カイコガの触角葉は哺乳類の 嗅球同様に糸球体構造を持ち，一般的な匂い情報処理も 担っています力5,性フェロモン処理を担う糸球体は巨大に 発達し「大糸球体」と呼ばれています。私はこの「大糸球体」 に，性フェロモンの超高感度検出を裏打ちする重要な神経 基盤が存在しているのではないかと考え，研究を進めてい ます。