脳外科治療支援技術とその展望

摘要

外科の日々の進歩は，外科医の手術手技の鍛錬と論文報告や学会討論による新規術式の情報共有によっている． しかし，手術技術の劇的な進歩は新たな医療機器によってもたらされることが多い． 外科医の新たな目となった，手術用顕微鏡は脳神経外科や耳鼻科眼科等の微細な臓器を扱う外科系診療科では劇的な手術成績の向上をもたらした． またそこまで至る診断でも，CTやMRIはそれまでの神経学と血管撮影が中心であった診断体系そのものを変革し，より低侵襲な診断を可能にした． 一般外科分野でも内視鏡による手術が開腹や開胸手術を凌駕し，ついにはーつの穴（臍部）よりの単孔手術が可能になっている． 脳神経外科においても． これらEngineer ingによって開発された機器は手術手技を大きく変えてきた． 1980年代の顕微鏡に始まり． 1990年代から2000年代にかけて手術用内視鏡の導入と，外科医の新しい目の導入によって狭い術野での微細な操作が可能になった． また，超音波，CT, MRIを術中に用い病変の特定や手術到達度を確認できる術中画像，そして操作部位の位置を診断画像上にリアルタイムに示すナビゲーションが登場した． これら術中画像はそれまで術者の経験から手技が決定されてきた手術を客観的な情報による意思決定を行う手術へと変化させた． ナビゲーション．もリアルタイムに操作位置を術者に示し効率的な手術を可’能にし，位置誤判断による合併症を予防する． 本稿では脳腫瘍手術に有用な術中MRIとナビゲーションといった治療支援技術を中心に述べ．最後に脳神経外科診療を変革している治療装置についてふれる．