非鉛系圧電セラミックスの研究開発動向：ドメイン制御による非鉛系圧電体結晶の性能向上

摘要

現在，環境問題への関心の高まりから，鉛やカドミウムなどの重金属を含まない材料への関心が高まっている．特に欧州では，環境問題への関心が高く，2003年7月1日から車における重金属使用の制限が開始されたのに続き，2006年7月1日からはすべての電子製品における重金属規制を行うことが，欧州議会で可決されている．このような観点から，電子部品における非鉛化は急速に進行し，電子部品において大きな割合を占めていた鉛ハンダの代わりに無鉛ハンダが実用化されるなど，非鉛材料への代替が進んでいる．しかし，圧電セラミックス材料に代表されるセラミックスフィルタ，アクチュエータ，トランスデューサにおいては，PZT（ジルコン酸チタン酸鉛）セラミックスに代わる圧電性能を持つ非鉛系圧電材料は得られておらず，その代替が困難な状況にある．もしも，有効な非鉛系圧電材料が開発できず，現在の状況のままで規制が実際に適用された場合，PZTセラミックス使用の延長が認められる可能性はあるものの，これまで圧電材料が使われていた応用において，他の材料（磁歪材料等）に取って代わられる可能性もある．したがって，このような事態を避けるためには，現在の鉛系圧電材料に匹敵する性能を持つ，またはそれを凌駕する性能を持つ非鉛系圧電材料を，果たして得ることができるのかどうかを明らかにすることは極めて重要であり，早急な課題である．ここでは非鉛系圧電材料におけるドメイン制御による性能向上の可能性について述べる．