日本外科学会会員の労働環境および診療報酬改定後の病院としての 勤務医師労働環境改善方策に関するアンケ—ト調查報告書

摘要

20年ほど前から日本外科学会への新規参入者が減 少している.これが地方における外科医の減少を引き おこし，さらに新臨床研修制度発足によつて外科を希 望する若手医師の減少に拍車がかかり,外科臨床現場 の労働環境は悪化の一歩を迪つている.これらの状況 に鑑み，平成19年に，日本外科学会として初めて会 員の労働環境および意識調査を行つた.アンケートか ら浮かび上がつた外科志望者数減少の原因は，労働時 間が長い，医療事故が多く医療訴訟のリスクが高い， さらに仕事に見合うだけの報酬が得られていないとい うものであった.外科医の過重労働は外科医自身の健 康が損なわれるだけでなく，過労による注意力の低下 を引き起こし，医療の安全性からも大きな問題といえ る.日本外科学会としてこのことを社会に訴え，また 外科系学会社会保険委員会連合を中心に手術手技料の 増額を働き掛けてきた.平成22年4月の診療報酬改 定で手術手技料の増額が認められたのは，その成果で あった.