濃硫酸環境におけるステンレス鋼の貴金属を用いたアノード防食法

摘要

濃硫酸を使用し，316鋼機器で構成されている化学プロセスの腐食課題解決に関して検討し，以下の結論を得た。 1．316鋼は，濃硫酸環境（95％から100％硫酸, 常温から80°C）で腐食電位の振動をともなう，全面腐食が発生した。 2．同環境で，316鋼に比較してカソード反応の過電圧の小さい金もしくは白金などの貴金属を所定の面積比で接触させることにより，316鋼を不動態化させ腐食の抑制されることを明らかにした。 3．この貴金属接触によるアノード防食の手法を実機に適用することにより，316鋼の腐食抑制を達成し，プロセスの生産性を改善した。 4．貴金属のカソード分極の過電圧が，316鋼に比較して小さいのは，貴金属に分子状硫酸の還元反応に対する触媒作用があるためではないかと推定された。