ミカンヒメコナカイガラムシの齢期識別法

摘要

ミカンヒメコナカイガラムシPseudococcus cryptus Hempell）はカソキツの葉，緑枝，果実を加害する重要な害虫である．本種は体表が粉状のワックスで覆われるうえ，葉が重なりあうような部位に集団で生息する傾向があるため，薬剤防除を行う際に散布むらがあったり，防除適期を逃すと，効果が不十分となることが多い．本種の防除適期は，比較的移動性があり，体表が十分にワックスで覆われていない1，2齢幼虫期とされている．そのため，本種の齢期識別は，効率的な防除を行ううえで重要であるが，これまでは体の大きさだけから判定されており，不正確さを伴った．クワコナカイガラムシPseudococcus comstocki（Kuwana）では，触角の節数とその形態的特徴から齢を判別できる（村上，1964）．また，フジコナカイガラムシPlanococcus kraunhiae（Kuwana）（勝又ら，1995）やマツモトコナカイガラムシ（伊澤，私信）についても，同様の方法が可能なことが判明している．そこで，ミカンヒメコナカイガラムシについても触角の形態の差によって齢識別ができるかどうかを調査するとともに，触角以外の特徴による識別の可能性についても検討した．