エンドファイト感染トールフェスクおよびベレニアルライグラス種子のヒラタコクヌストモドキの増殖に対する効果

摘要

エンドファイトとは植物体内部に共生する微生物の総称であるが，ここではイネ科植物体内で生活する糸状菌に限定したい．エンドファイトに感染した芝草や牧草は，非感染植物に比べ耐病虫性，耐乾性が強いことが知られており，有望な生物的防除手段として近年研究が盛んになってきた（Schardland Phillips，1997；古賀，1997）．主要な牧草や芝草として世界的に広く利用されているイネ科のトールフェスクFestuca arundinacea Shreb．，ベレニアルライグラスLolium perenne L．にほそれぞれバッカク菌科のエンドファイトであるNeotyphodium coenophialum ，Neotyphodium loliiが感染する（ごく最近までこれらの属名としてほAcremoniumが適用されてきた；Glenn et al．，1996）．これらのエンドファイトは，種子や植物体内に菌糸の状態で寄生していて，植物の体外に出ることがなく，また病徴はまったく現さない．したがってこれらNeotyphodium型のエンドファイトに植物が感染していても，非感染植物と見分けることはできない．また，エンドファイトは感染植物の種子伝染により次世代に引き継がれる（古賀，1993）．エンドファイトに感染したトールフェスク，ベレニアルライグラスはこれまで少なくとも5日10科23種の昆虫に対し耐虫性を示すことが主に海外から報告されてきた（Breen，1994）．しかし，エンドファイトの耐虫性に関する日本からの研究は開始されたばかりである．