下草へのチリカプリダニ放飼によるハウス栽培ブドウ園ハダニ管理法

摘要

チリカプリダニは背丈の高い木本性寄主には定着がよくないといわれてきた．そこで施設栽培ブドウ園（巨峰，10a）の下草にチリカプリダニを放飼することにより，下草で越冬後の増殖を開始したカンザワハダニ個体群を防除し，栽培期間を通じてブドウ葉上のカソザワハダニを被害許容密度以下に管理する試験を行った．1995年5月下旬と6月中旬の2回に分けて放飼したチリカプリダニ合計8，000個体は，下草（ハコべ，ノゲシ，エノコログサなど）で発生していたカソザワハダニをほぼ食い尽くした（7月初旬）．その結果，放飼園において笹ブドウ葉上のカソザワハダニ密度を7月を通じ，無放飼園の1／10程度に抑制できた．なお，この間，下草で繁殖したチリカプリダニ個体群の一部が餌を求めて樹上へ移動した．園内のチリカプリダニ個体群が8月初鋸こ餌不足で絶滅した後，再びカンザワ／、ダニが放飼園で増殖したが，低密度（＜平均1．73♀♀/葉）であったため，収穫まで薬剤防除を行わずに済んだ．試験場所としてハウスブドウ園を提供していただいた奈良県吉野郡西吉野村の川崎均氏にお礼申し上げる．また，調査に協力いただいた奈良県果樹振興センターの萩原敏弘氏，一部の放飼試験にスパイデックスを供試いただいたトーメン生物産業部に感謝の意を表する．本研究の一部は文部省科学研究費補助金（09306003および8304042）および農林水産省生態秩序計画補助金（BCP－98－I－B－1）を受けて行った．