屋内と屋外に設置したライトトラップによる屋外昆虫の屋内への侵人数の評価

摘要

屋外設置のライトトラップへの昆虫の捕獲数と屋内への侵入数（屋内落下数＋屋内設置のライトトラップの捕獲数）を同時に調査し，両者の関係を明らかにするとともに，外部から直接光がみえないように設置した屋内ライトトラップが外から昆虫を誘引するかどうかを検討した．屋外での捕獲数と屋内への侵入数に正の相関があり，屋外での優占種と屋内での優占種も頬似していたため，屋外捕獲数に対する屋内侵入数の比率（屋内への侵人数／屋外での捕獲数×100％）が屋内への侵入数を的確に表現できる指標になると考えられた．屋外捕獲数に対する屋内侵入数の比率を指標として，様々な室内照明条件下での昆虫の侵入を評価した．室内に設置したライトトラップは，外部に光が直接漏れないように配置した．その結果，室内灯とライトトラップの両方を点灯した区と室内灯のみを点灯した区では，屋外捕獲数に対する屋内侵入数の比率に差がなかった（それぞれ4．1％と5．7％）．また，ライトトラップのみ点灯した区とライトトラップおよび室内の蛍光灯を共に消灯した区でも屋外捕獲数に対する屋内侵人数の比率に有意差はなかった（それぞれ0．6％と0．5％）．さらに，前者の2区は，後者の2区よりも屋外捕獲数に対する屋内侵入数の比率が有意に高かった．このことは，正の走光性を示す昆虫の屋内への侵入が，室内灯の点灯に依存するものであり，外に直接光が漏れないように設置したライトトラップによる外部からの昆虫の誘引が無視できる程度であることが示された．