オオタバコガ幼虫の頭幅に基づく齢期の推定

摘要

広食性害虫であるオオタバコガの幼虫の頭幅に基づく齢期の推定を茨城県および山梨県の系統を用いて試みた．人工飼料で継代飼育した茨城系の頭幅レンジは，ト3齢および次亜終齢～終齢の各発育段階では他の齢期のレンジと重複せず，かつ山梨系の頭幅レンジとの間に有意な差は認められなかった．しかし，桶化前の経過齢数には系統間で差があり，茨城系統では5齢を経て輔化する5齢型が91．8％を占め，残りが6齢型と7齢型であったのに対して，山梨系統では5齢型は36．1％と少なく6齢型が63．9％であった．頭幅の平均値は，1齢を除くすべての齢期で5齢型が6齢型より有意に大きかった．一方，茨城県のヒマワリ圃場で採集した幼虫の頭幅の頻度分布には飼育系統の1齢，亜終齢，終齢に相当するピークが認められた．しかし，2齢と3齢に相当するピークはそれぞれ飼育系統の1齢と2齢，2齢と3齢のレンジの間に位置し，人工飼料で飼育した系統に比べて蛸化までの脱皮回数が多く，幼虫期間が長いと推定された．以上の結果から，幼虫の頭幅測定によって本種の発生時期の予測精度を改善できること，同一発育段階の個体を薬剤感受性試験に用いるために幼虫の頭幅を揃えると供試個体が特定の齢期型に偏る危険性があることが明らかとなった．