現場の知見を用いた利用者行動のモデル化—空港セルフサービスチェックイン機器利用の意思決定メカニズム

摘要

航空会社の提供プロダクトは，「A空港からB空港まで，飛行機を使って人や物を運ぶこと」であり，その本質は，提供プロダクトの無形性，生産と消費の同時性，在庫不可能，品質の不安定性，労働集約的等の特徴をもつ運輸業かつサービス業であると定義される.Levittによると，「一般的には航空会社とはX地点からY地点へ飛ぶ飛行機の座席を売っている業者と考えられている.しかし，もし航空会社が自社製品をそう考えてしまったなら，その会社は消え去るだろう.なぜなら，航空会社の製品には強力かつ決定的な隠れた特性，すなわちサービスがついているからだ.もしこれが無かったら，全くの別製品になってしまう」業界である.そのような背景のもとで，品質とコストという背反する命題に航空会社は継続的に直面している.本邦の航空業界の短期的展望は，規制緩和による低運賃を提供するローコストキャリア(LCC)の参入や，航空自由化促進により，新規事業者の参入と量的緩和により，多くの競合相手との熾烈な競争が待ち構えている.長期的には少子高齢化社会の影響で航空需要を国外に求め，国際線への事業展開が必須であり，労働単価が安い新興国との競争も避けられない.