スペンセリアン・ペンマンシップにおける筆記体小文字書法 : 明治期におけるわが国の書字教育への影響に関する基礎資料として

摘要

本稿は，わが国における文字を手書きすることの教育，すなわち書字教育が重視されない背景を探るための基礎資料として，19 世紀の米国において広く普及していたスペンセリアン・ペンマンシップに注目し，その小文字書法について解説した．その方法として，“Spencerian Keyto Practical Penmanship”（1866），Theory of Spencerian Penmanship for Schools and Private Learners ”（1874）を参照し，明治20 年代におけるわが国の書字教育に及ぼした影響について探ることを目的とした．その結果として，スペンセリアン・ペンマンシップがわが国において，書法の系統性を重視する教材に影響を及ぼしたことを確認した．さらに，日米における文字表記の相違から，わが国の書字教育における受容過程において，米国とは異なる展開を見せたことを指摘した．