オランアスリの空間構築 ̶̶ バテッの水系ネットワークに基づいた空間構築様式 ̶̶

摘要

マレーシア半島部に暮らすオランアスリ、バテッの空間構築様式を、水系に着目して明らかにした。バテッは伝統的に移動狩猟採集生活を営んできた人々である。空間に関する語彙、日々の空間利用、認知地図を調査した結果、彼らが川を基準に空間を構築していることが示唆された。さらに川の呼称と個人名に関する慣習から、川が集合的アイデンティティの拠り所とされ、テリトリーが形成されているという、バテッの伸展的な空間構築様式が示された。近代的土地所有概念は、土地を区切ってそれを所有するという領域的な空間構築様式に基づいている。マレーシアでは土地所有権の獲得を目的にオランアスリの土地回復運動が行われているが、各集団の空間構築様式を考慮して実施する必要があるだろう。