北部フィリピンのトウモロコシ作の実態 : イザベラ州における農家調査による

摘要

本稿は, 北部フィリピン, イザベラ州のトウモロコシ作の生産構造を, 農家調査により明らかにする.古くからのトウモロコシ産地である調査地域において, その生産は主として小規模自作農による二期作モノカルチュアとしてなされている.生産は飼料用のみで, 平均作付面積は1.6haである.調査地における種子-肥料技術の普及率は高く, 調査農家のトウモロコシの単収水準は全国平均・地域平均を大きく上回り, 改良品種の潜在的収量水準に近い水準を達成している農家も多い.潅漑稲作の場合と比較し, トウモロコシ作の種子-肥料技術は経常財使用への偏向度がはるかに強いことを特徴とする.労働集約度は稲作とほぼ同じ水準にあるが, 固定資本サービスの利用度ははるかに低い.結果として, トウモロコシ作の土地生産性, 単位面積あたり付加価値, 単位面積あたり農家所得は, 潅漑稲作の場合の約40%に過ぎない.