A Note on the life of Lightner Witmer: the founder of school psychology.

摘要

近年,学校をめぐるさまざまな問題が大きく取り上げられる中で,学校における心理学的支援の必要性が繰り返し叫ばれている。そうした学校における心理学的支援を専門的に扱う分野として注目されているのが学校心理学(school psychology)である。我が国で学校心理学が注目されるようになったのは1990年代の後半のことであり,我が国の学校心理学の歴史はようやく20年に達したかどうかというところである。一方,アメリカでは,1940年代にアメリカ心理学会(APA)の学校心理学部門(第16部門)がおかれ,さらに,1950年代には学校心理学の専門家の職域などをめぐって議論も行われるなど,学校心理学が心理学の一領域として認知されるようになってから半世紀以上を経ている。ただ,学校心理学の起源そのものはさらに古く,1890年代にまで遡るとされている(たとえば,Fagan, &Wise, 1994)。その黎明期の学校心理学を代表する心理学者としてしばしばとりあげられているのが,本稿で扱うLightner Witmer(1867-1956)である。Witmerについては,これまでも学校心理学およびアメリカにおける臨床心理学の創始者として心理学史の概論書のなかで紹介されている(たとえば,Goodwin,2008; Lawson, Graham, & Baker, 2007)。また,McReynolds(1997)による詳細な伝記があり,さらに,短い伝記的な記述も公刊されている(たとえば,McReynolds,1998)。しかし,我が国ではWitmerに関する文献は極めて少なく,その人物像も業績もほとんど知られていない。そこで,本稿では,主にMcReynolds(1997)の伝記をもとにWitmerの生涯