lllb型膵損傷術後膵仮性嚢胞に内視鏡的十二指腸・嚢胞ドレナージ術が奏功した1例

摘要

外傷性膵損傷術後に発生した仮性嚢胞に対して内視鏡的に十二指腸・嚢胞ドレナージを行い良好な経過を得たので報告する.症例は27歳,男性.ハンマーで腹部を強打され受傷し,腹腔内出血・遊離ガス像を認めたため緊急手術となった.膵はSMV直上で完全断裂しておりIIIb型膵損傷を呈していたため膵空腸吻合術(Letton-Wilson法)を施行し,また右半結腸の広範な穿孔・挫滅があり右半結腸切除術を施行した.術後,膵液瘻みられたが保存的治療で軽快し第40病日に退院となった.受傷より約3カ月後に上腹部痛が出現し,諸検査で離断した尾側膵から発生した膵仮性嚢胞と診断した.内視鏡的に十二指腸球部後壁の隆起部を針状ナイフで穿刺し貯溜液のドレナージを図った.その後,症状は軽決し嚢胞も消失し,処置後約1年が経過した現在も再発はみられず,膵機能も正常である.内視鏡的十二指腸・嚢胞ドレナージ術は小さな嚢胞でも壁に圧排像として認められれば確実に穿刺できる.また,今回のように膵管と交通性のある症例に対しても内瘻化が容易であり,膵液瘻を作りにくいなどの利点を有しており,膵損傷後の仮性嚢胞の治療に簡便にまた安全に施行でき有効な治療手段と考えられた.