ラットにおけるオレイン酸十二指腸内投与による重炭酸およびアミラーゼ分泌刺激に対する内因性インスリンの増強効果についての検討

摘要

〔目的〕膵ホルモンは,islet-acinar portal systemを介して膵外分泌腺に灌流することが知られている.以前我々は,ラットにおける内因性・外因性コレシストキニン(CCK)刺激による膵外分泌が,内因性インスリンによって増強することを報告した.そこで今回,ラットにおける膵重炭酸分泌に対する内因性インスリンの効果について検討した.〔対象と方法〕麻酔下のラットで純粋膵液を採取し,十二指腸にオレイン酸(pH6.5,O.1mmol)と,対照として生理食塩水,Tween 80を1時間持続投与した.また,経静脈的にグルコース0.25,0.5g/kg/h,対照として生理食塩水を併用投与した.膵液の液量,重炭酸濃度,アミラーゼ濃度,およびグルコース負荷前後の血糖,実験終了時の血中インスリン濃度を測定した.〔結果〕オレイン酸の十二指腸内投与により,膵液量(μl/h),重炭酸分泌量(μEq/h),アミラーゼ分泌量(IU/h)はいずれも対照群に比べ有意に増加した.血糖・血中インスリン濃度は,グルコース負荷により,用量と相関して上昇した.グルコース負荷群でもオレイン酸刺激下の膵液量,重炭酸分泌量,アミラーゼ分泌量のいずれもグルコースの用量依存性に増加し,オレイン酸単独投与群に比ベグルコース0.5g/kg/h投与群でいずれも有意に分泌反応が増強された.〔結語〕高用量ブドウ糖負荷は内因性インスリンにより,分泌の増加を介してオレイン酸の腸管内投与による膵液・重炭酸・アミラーゼ分泌量を有意に増強した.内因性インスリンは,腺房細胞のみならず導管系に対しても分泌増強効果を示すことから,islet-acinar portal systemにおけるインスリン分泌は,膵外分泌調節に重要であると考えられる.