直交符号並列伝送方式を適用したヘリコプタ衛星通信システム

摘要

ヘリコプターは機動性の高い飛行特性を持つことから災害時の救助活動, 医療活動, 報道, 軍事目的など様々な場面で用いられている. しかし, ヘリコプターが海上や山岳地帯を飛行する場合, 地上局との直接通信ができなくなることもある. そのような場面ではヘリコプター衛星通信の利用が必要となる. ヘリコプタ衛星通信の最も重大な問題点として, ヘリコプタのプロペラによる通信路の周期的遮断がある. 従来, 信号の周期遮断を回避する技術としては時間ダイバーシチが用いられてきた. しかし, 時間ダイバーシチだけでは, 高速伝送時に遮断によるバースト誤りが長大となり, 誤り訂正後のBER が劣化する. この問題を解決するため, ヘリコプタ衛星通信にOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)を適用し, サブキャリア毎に畳込み符号化を行うシステムが, 過去に提案されている. これにより長大なバースト誤りをサブキャリア毎に分散させ, BER 特性を改善することができる. しかし, この時サブキャリアの数だけ符号器と復号器が必要となり, 回路規模の増大を招くことが課題として残っている. そこで本研究では, 時間ダイバーシチ方式と直交符号並列伝送方式を用いたヘリコプタ衛星通信システムを提案する. 提案方式の有効性を確認するため、異なる遮断環境下（遮断率8.6％及び32.1％）、及び伝送速度（3.6kbps, 384kbps及び1.5Mbps）で計算機シミュレーションを行った. その結果, 低遮断率（8.6%）のときの提案システムのBER特性は従来システムのBER特性と同等な特性を持っている. 高遮断率（32.1%）の場合は提案システムのBER特性が従来システムのBER特性より 0.5[dB] 程度改善されていることを確認した. その原因は時間ダイバーシチ方式のパラメータを2から4に増やしたことであることを確認した. また, BER特性が伝送速度に依存しないことから, バースト誤りを分散させるための並列伝送の効果が十分に得られていると考えられる. また, 従来システムの問題点であった回路規模の拡大は提案システムではシステムの構成と直交符号並列伝送方式の特徴によって改善されることも確認した. 以上の結果から, 提案システムのヘリコプタ衛星通信への適用が有効であることが示された.