主成分分析を用いた車のフロントフェース画像の特徴解析及び類似車検索への応用

摘要

車のフロントフェースの形状（正面から見た形状）に対しては、ヘッドライトを目、グリルを鼻、ライセンスを口、といった様に見做すことにより、人間の顔とのアナロジーから図形的な特徴や印象を議論することができる。人間の顔画像に対しては、個々の顔部品の形状及びそれらの配置情報に対する主成分分析に基づく似顔絵生成手法について多角的な研究が進められている。本論文では、この手法をもとに、車のフロントフェース画像に対する特徴解析、特徴強調による似顔絵生成、さらには類似車検索や表情印象分析を行う方法について述べる。まず、車のフロントフェース画像の座標データを取得するために車のフロントフェースのワイヤフレームモデルを作成した。196台の車の座標データによって平均データを計算し、平均車顔を作成する。各車部品に対して、入力車顔と平均車顔とどの差を求めた上で、主成分分析を行い、固有空間を得る。次に、入力車顔と平均車顔の形状及び配置の差分を求め、固有空間（固有ベクトル）への直交展開を行う。直交展開により求められた係数に従って強調倍率を決め、固有ベクトルに対する強調処理を行う。最後に、特徴強調された形状と配置の差分情報に平均形状、平均配置を加えることによって最終的な車似顔絵が得られる。さらに、本論文では、類似車検索や、車の表情印象分析などの手法を検討した。各車部品の主成分得点値や主成分数を考慮し、各車部品への重み付けや輪郭と配置の関係に関して考慮することによって、形状と配置の特徴が考慮された類似車検索システムを構築した。検索キー車と類似する上位6位までの車を検索することができる。また、車のフロントフェース画像において表情印象に対応する車似顔絵を定義することで、車の表情印象に対して主成分による定量的記述を行った。これにより、主成分の組み合わせにおける10通りの表情印象の違いを確認することができた。さらに、表情印象を考慮した類似車顔検索も実現できた。今後の課題としては、より精度が高い類似車検索手法が求められる。また、車のフロントフェース形状の自動抽出と自動抽出に関する特徴分析なども考えられる。