PUF出力に巡回シフトを適用した鍵生成システムの実装システムについて

摘要

PUF（Physically Unclonable Function) とは，個々のハードウェアが持つ固有の物理的な特性に依存して出力を返す物理的な関数であり，安全に鍵を導出したり，乱数生成に応用されている．またPUFには，PUF毎に固有な特性を持つという性質と，同じ特性を持つPUFを複製することは非常に困難であるという性質がある．さらにPUFを用いる上での利点として，従来のセキュリティでは，例えばIC (Integrated Circuit) を用いる場合，多くの場合は内部に搭載された非揮発性メモリ等に秘密情報を保存することで認証を行う．しかし，電力を供給していない間も内部に秘密情報が保存されているため，電子顕微鏡などを用いて不揮発性メモリが物理的に解析されることにより鍵が漏えいするなど，物理的攻撃をされる危険性がある．これに対しPUF は，必要な時に各人工物固有の個体差から秘密情報を抽出するために非揮発性のメモリを用いる必要がなく，電力が供給されていない間はメモリ等に秘密情報が保存されずに，物理的に攻撃される危険性が低い．以上より認証等に利用されることが期待されている．これらの性質より，認証等に利用されることが期待されている． PUF を用いて鍵の生成および再現を行う手法として，Paral等はPMKG（Pattern Matching Key Generation）を提案した．また駒野らはPMKGを改良した，巡回シフトを用いたPUF に基づくパターン照合鍵生成システム PMKG-RT（Pattern Matching Key Generation Rotation）を提案した．駒野らの手法は，まだハードウェア上での動作試験がされていない．PUF は物理的な関数であり，レスポンスには一定のノイズが含まれるため，ソフトウェア上だけでなくハードウェア上においても動作の検証をすることは非常に重要である．本研究では多数（100 台）のSASEBO-GII 上で，PUFの一種であるArbiter PUF とSRAM PUF を用いてPMKG-RT をFPGA上で実装評価する．その結果，ハードウェア上でPMKG-RTが正常に動作することを確認できた．また，PMKG-RTに用いるPUF毎に優れている点があることも確認できた．Arbiter PUF はPMKG-RT の仕様に合うように，任意にチャレンジのビット長を拡張できる点で優れていた．一方，SRAM PUF は実装する際に専用の回路が必要なく，またPUF 間のレスポンス差分が大きいことより鍵再現フェイズで第二種誤り（False Acceptance）が発生しにくい点で優れていることを実験より確認できた．