薄板のＬ曲げ加工における高精度化の研究

摘要

曲げ加工された板材から作られる金属製品は数多く存在する.曲げ加工の精度は溶接の質に影響を与え,すなわち,製品の質に大きく影響する.しかし,板材の面外曲げは単純なだけに, 変形に対する拘束が少ないために形状凍結性が悪い.曲げ外力を除くと,曲げ部に発生した内部応力と弾性回復のために,スプリングバックが大きく発生する.板材の曲げ加工には,突き曲げ加工が多く用いられている。V曲げやL曲げ、U曲げなどである.V曲げ加工は取り扱いが容易であり,工業的に多用されている.しかし,V曲げ加工ではポンチとダイスのクリアランスや曲げ加工力がわずかに変化すると,曲げられる角度が大きく影響を受けるため,高精度曲げを行うことは難しい.これに対しＬ曲げ加工は,ダイスのクリアランスや曲げ加工力が曲げ加工精度にあまり影響を与えないだけでなく,曲げられた板材の曲げ角を修正することが容易である.しかしながら,Ｌ曲げ加工の解説や研究は少ないのが現状である.そこで本研究は，薄板のＬ曲げ加工の高精度化を目標とし,板材のＬ曲げ加工において,ダイス曲げ半径Ｒdにおける曲げ加工力,曲げ角とスプリングバック等について検討を加え,この加工の特徴を明らかにした。または、スプリングバック量を正確に予測し,L曲げによる板材の曲げ角を修正し,高精度L曲げ製品の作成を試みた.主に結果を以下に示す.(1)ダイスの肩半径Rdの増加により,以下の結果を得た.a）最大曲げ荷重が減少する.b）板材にスプリングバック量が増加する.c）L曲げの伸び値が増加し、実験値と理論値はほぼ一致する.(2)90度修正曲げによって作成した三種類の板材(A1050,SPCC,SUS304)の四角缶は90 0.2度の精度ができた.