超音波による立木の材質測定と立木材質マップの作成

摘要

トドマツ，カラマツ立木に関し，超音波により材質測定を行ってきた結果，以下のことが明らかになった。（1）いくつかの林分について，超音波伝播速度を用いて算出された見かけのヤング係数により，材質の差，および林齢の違いによる材質の変化の傾向が確認された。（2）超音波伝播速度の2乗と各試験体の見かけの密度を用いて算出した見かけのヤング係数との関係について，原点を通る直線で単回帰分析を行った結果，決定係数が高かった。このことにより，それぞれの林分における見かけの密度は，ほぼ一定と見なせることができた。また，それぞれの回帰係数より各林分の見かけの密度が推定できた。（3）超音波伝播速度は，立木の材質に関する新たな指標と考えることができた。すなわち，超音波の伝播速度を用いても，スギ立木に関し，打撃法による応力波を用いた，我々の既報の測定と等価な結果が得られることが判明した。（4）カラマツ雑種においては，立木の状態で見かけのヤング係数について，家系間の差異が認められた。（5）見かけのヤング係数と成長の指標である胸高直径，樹高との間の関係については，今後のデータの蓄積が必要である。（6）今回の方法を用いれば，森林内における立木の材質マップを得ることができ，地形等の環境と材質の関係を調べる上で，また素材生産を行う上で，有力な情報となると考えられる。