Studies on the growth of planted stands in Kyoto University Forest in Ashiu II : Stand condition at the setting of study area in planted Hinoki (Chamaecyparis obtusa) forest and growth of stands for 5 years

摘要

京都大学芦生演習林のヒノキ人工造林地内に, 標高, 地形を考慮した19個所の永久調査区を設け, ヒノキ造林木の成長に関する調査を継続して行うことにした。設定時と5年後の調査から次のようなことが明らかになった。1) 芦生演習林のヒノキ造林地は主に天然生のスギを多く含んだ林分が多かった。スギは若齢の林分では直径階の低い部分に多く高齢林分では各直径階に分散し, 特に林分の最上層を形成している場合が多かった。2) D-H曲線は各林分で経時的に変化し, 上位木の直径約10 - 20cmの林分では曲線の傾きが急で, 20cm以上の林分では頭打ちの傾向がみられた。芦生のヒノキの最大樹高は20m前後でスギに比べて低かった。3) 林齢20年以上の造林地は低標高地の斜面下部に植栽されているところが多くこのような林分では地位3以上の良好な成長を示した。4) 高標高地の斜面上部の成長については調査林分が若齢のため詳細な結果は得られなかった。しかし林齢が60年前後の標高差が265mある2林分の比較から, 高標高地の斜面下部では樹高成長は低下するが, 直径成長, 蓄積にはそれほど差がみられなかった。さらに同林分の斜面中腹では樹高成長に加え, 直径成長, 蓄積の低下が著しかった。5) 材積成長率は林齢20年までに急激に低下し, 20年生林分で年10％, それより高齢の林分では徐々に低下し, 林齢60年前後の林分では低標高地の斜面下部で2％, 高標高地では斜面下部で3％, 斜面中腹で5％強となった。6) 林齢15年までの林分では立木本数の減少が著しく, その主たる原因は折れ, 倒れといった雪害によるものであった。7) 本演のヒノキ造林地には間伐を必要とする林分が多く認められ, 林齢20年前半の林分から被圧木は増加し林齢30年から高齢の林分では被圧が直接的な原因で自然枯死する個体が多くみられた。8) クマによるヒノキ樹皮の剥害は林齢が20年以上の林分で現れ始め, 林分によって被害の程度が異なった。被害が大きい若い林分では被害木は胸高直径8 - 18cmの上位木に集中し, 枯死に到るものもみられた。