The Damage-analysis on the Growth of Middle-aged Japanease Red Pine (Pinus densiflora) Infested with Pine Caterpillar (Denadrolimus spectabilis)

摘要

アカマツの食葉性害虫のうちで, マツカレハはその被害の激しいことで最も重視されている。アカマツに対するマツカレハのように, 林木に対する食葉性害虫の食害に対する被害木のその後の生育経過を調査した報告は次第に多くなってきた。本報告は, 樹齢40年を経過したアカマツ林を調査対象とし, 過去にマツカレハの激害をうけ, 以後, 生長を回復しつつある状況について調査したものである。調査の一部は1961年 (既報) に行なわれ, その後さらに詳しい資料を1964年の11月に採取した。調査林分は京都府下田辺町に近接した石英斑岩の丘陵地に成立したアカマツ林で, 1964年には樹齢41 - 47年, 平均胸高直径9. 0cm, 平均樹高8. 1mであった。調査は, 標準地を設け, 上木のアカマツの毎木調査を, また対象林分中より, 11本を選び伐倒し, 幹, 枝, 針葉の地上部の測定を行った。さらに樹幹解析により生育経過を求め, マツカレハの被害に関する被害解析を試みた。調査結果をまとめると次のようになる。1) 調査アカマツ林の現存量は, ha当り針葉 9. 6ton (生重), 3. 9ton (乾重), 幹99. 2ton (生重), 52. 9ton (乾重), 枝15. 4ton (生重), 7. 5ton (乾重) となった。2) 新葉と旧葉の割合は, ほぼ7 : 2で, 旧葉は全葉量の23. 5%を占めていた。3) 地上部の幹, 枝, 針葉の重量配分は胸高直径によって大きな差はあらわれず, 幹-82%, 枝-11 - 12%, 針葉-6 - 7%となった。4) マツカレハが大発生した当時の生長量の低下は激しく, 調査した大部分の個体が, 年生長量の最低の1955年には前年の大きさの1%も生長していない。5) マツカレハが生息しなくなってから, 被害木は徐々に生長を回復していることがわかった。しかし, 6年経過しても大部分の個体がマツカレハ被害前の生長率の20 - 30%で, 被害の影響から脱したとはいえない。6) 本調査アカマツ針葉の平均純同化率 (a) と非同化器官の平均呼吸率 (R) はa = 3. 714 - 2. 045g/g・year R = 0. 055g/g・year となった。7) マツカレハの発生当時の被害状況を概略推定すると, 全針葉のほぼ70%近くが食害されたと思われ, このためにはha当り約210, 000頭のマツカレハが生息していたことになる。8) 気象的な災害のためと思われる生長量の低下が1962年, 1963年と認められ, 本報告では第二室戸台風 (1961年9月16日襲来) と1963年1月の異常低温がその原因と推察した。これらの原因は調査木がマツカレハの被害から回復するのをさらにおくらせたようである。