Structure of Multi-Storied Stand of Planted Kuromatsu (Pinus thunbergii) Stratified-Mixed with Natural Hinoki (Chamaecytaris obtusa), Akamatsu (Pinus densiflora) and Broad Leaved Trees

摘要

ヒノキの人工林に天然生のアカマツ等が混交した複層林は西日本の各地に多くみられるが, その反対の事例はきわめて珍しい。本研究は, 昭和62年11月, 広島県西部の西条営林署蛯ケ原国有林に成立している20年生の植栽クロマツに, 天然生のヒノキ, アカマツ, 広葉樹が階層混交した複層林の構造を解析したものである。本林分は生長の著しく不良であった50年生のヒノキ前生林分を皆伐した後, クロマツを約4, 000本/ha植栽し, 通常の下刈りを行なって20年を経過し, 成林したものである。階層構造や直径分布をみると, 斜面中腹の林分 (Plot 2) は階層の分離が明らかで, 主として植栽木のクロマツを上層木とし, 天然生のヒノキ, 広葉樹を中層木とする二段林型の混交複層林であり, 調査対象林分の代表的な林型である。斜面上部は (Plot 1), アカマツの混交率が高く, 一部の箇所については3年前に除伐が行なわれたが, 樹高分布がほぼ正規型で連続的に階層混交した択伐林型となっている。斜面の下部については (Plot 3) 天然生のヒノキの生長がきわめて良好であったので, 10年前, ヒノキの優勢木以外はすべて除伐された結果, 樹高は7 - 13mに達し, 林冠はほぼ閉鎖した単層構造となっている。アカマツや広葉樹のほとんどは皆伐後天然更新したものであるが, ヒノキはその生長経過から判断して, 前生林分内に天然更新していた稚樹が生長したものである。そして大きい個体の生長は著しく大きく, 年平均樹高生長量は40cm以上に達している。本林分は若齢であるため多くはまだ充分閉鎖せず, 胸高断面積合計も小さい。しかしかつて瘠悪であった林地も, 中腹以下では徐々に肥沃性を高めつつあるようである。これらのことから, 林種転換によるクロマツの造林は失敗であったといえようが, 今後, 階層混交林作業が粗放的に行なわれるならば, 天然生ヒノキの生産性はむしろ高まると思われる。