Effects of the Feeding by the Japanese Deer，Cervus nipρon centralis KISHIDA， and the Japanese Serow, Caρricornis crisρus TEMMINCK, upon the Growth of Young Cryptmeria japonica D. Don

摘要

本報告には, ホンシュウジカ (Cervus nippon centralis KISIDA) またはニホンカモシカ (Capricornis crispus TEMMINCK) に食害されたスギ若齢木の生育を, 1987年6月から1989年5月まで, 和歌山演習林において調査した結果, および上賀茂試験地において, 獣害を想定してスギ苗木を用いた主軸枝葉の切断による模型試験 (1988年3月 - 1989年4月) の結果がまとめられている。和歌山演習林でみられたスギの被害の大部分は, 幹主軸先端や側枝の葉が食害された先端部枝葉食害タイプで, 幹が剥皮された樹皮剥皮タイプはすくなかった (表-1)。ホンシュウジカまたはニホンカモシカの食害可能高は, 被害部位の高さから, 140 - 150 cmと推定された (図-2)。幹主軸の先端が食害されたスギは, 食害部より下部にある健全な側枝が上長伸長し, 幹として生長していた。この場合, 被害木の約90％はl本の側枝が上長伸長していたが, 複数 (2本または3本) の側枝が上長伸長したもの, 主軸食害痕から力強い萌芽枝が伸長したものもみられた。人為による切断試験においても, 同様の結果が得られた。1本の側枝が幹として上長伸長した場合, 植栽翌春に被害をうけたクマスギ, アシウスギでは, 樹高生長に食害の影響はみられなかった。有田一号, クモトオシでは, 食害の影響は. 3年間で, 樹高のl年間の生長量程度かそれ以下の減退にとどまっていた。人為による主軸切断の場合も, 切断長が30cmまでであれば, 側枝が伸長し樹高には大きな影響をあたえないことが明らかになった (表-6)。回復幹の形も早い時期に外観上正常のように回復し, その肥大生長とともに食害痕をまき込んで, 痕跡は残らなくなっていた。回復幹の中にまき込まれた旧幹の切断痕は, 褐色に変色して材中に残ることが確認された。和歌山演習林におけるホンシュウジカ, ニホンカモシカのスギへの加害は, 現状では, 本調査により, スギの回復力の強さにより, 大きな問題となるほどではないと結論された。