A comparison of the distribution properties of two dominant species, Aesculus turbinata, Pterocarya rhoifolia in the natural riparian forest of the Kyoto University Forest in Ashiu.

摘要

京都大学芦生演習林において谷部の優占高木種として成立地形を同一視されてきたトチノキ (Pesculus turbinata) とサワグルミ (Pterocarya rhoifolia) に関し, 生態分布における種間関係を明らかにすることを目的として, 一小集水域における両種の分布状況を調べ, 地形要因との相関による立地学的解析を試みた。河谷地形が, 斜面からの重力による崩積土の作用と, 河川の流水による侵食・堆積の物理的攪乱作用との2要因に影響されていることに基づき, 河谷を斜面部, 河川部, その中間的存在としての段丘部とに3区分した。河川部と段丘部については河谷内において山脚より内部に谷部平坦地が発達する場合に, 表面侵食を受けていない地表平坦面を特徴とする段丘部と, 現行河川流路の影響下にあって表面侵食を受けている河川部とを区別した。地形の3類型と樹種分布との相関関係では, トチノキの出現頻度が斜面部に最も多く, 段丘部, 河川部の順で減少しているのに対し, サワグルミでは河川部に全調査個体の9割が分布し, 段丘部, 斜面部の順に出現頻度が減少していた。3類型の発達には河谷の縦断・横断形状との大観的な対応が認められる為, 河谷形状の変化に応じた分布個体の偏在が各樹種において確認された。共に渓畔林の優占高木種であるトチノキとサワグルミの分布は, 段丘部を介在として分離され, 谷部内部の地形に対する水平的なすみわけが確認された。