リアリティが宿る理由－プジョー 907 (PEUGEOT 907)

摘要

自動車技術の成熟に伴ない、自動車なんてどれ買ったって大差ない、という認識が世間一般に広がった。クルマなんかにこだわるのはもう古い、と言う輩もいまや少なくない。 しかしその一方で、消費者の選択眼は日増しに機能、性能よりもデザインやブランド哲学に軸足を移しており、そこに筋の通った主張を欠けば生き残っていけない時代でもある。 そして近年、ことのほかデザインの及ぼす影響力に敏感になっているのがプジョーだ。 ピニンフアリーナとの強力タッグによって実用車に普遍的な美をもたらした80～90年代が過ぎ、98年デビューの206以降、積極的に新しいデザインに挑戦し、2000年からは毎年4台ずつコンセプトカーを出品し世に問うている。 そんな彼らの作品の中でも、907はひときわ強い思い入れを込めて制作された。 古典的なロングノーズ·シヨートデッキスタイルの高級グラン·トウーリスムというテーマは、「新デザインセンターのエントランスを恒久的に飾るに相応しい、プジョーの価値観を余さず反映した、今後10年、20年経っても色褪せないものを作る」という目標があったからこそ選ばれたのだ。