北海道厚岸町におけるスズタケの一斉開花について

摘要

ズズタケSasa borealis (Hack.) Makino et Shibaねは日本の冷温帯域から亜寒帯域にかけて分布す るイネ科タケ亜科に属する植物である（大井1987)。イネ科タケ亜科の植物は、地下茎によって広 範囲に分布を広げて栄養繁殖し、しばしば一斉に開花して枯死するという特徴を持つ。そのうちの ササ類は森林の下層で優占し、他の下層植生を被陰させるため植物相の単純化を招くとされる（豊 岡ら1985,大沢ら1991)。そのため、ササの開花.枯死後には、林床の光環境が明るくなり樹木の更 新が促進され、森林動態に影響を与える重要な植物として知られている（蒔田ら2004)。ササの開 花に関する報告はこれまでもされている力s(蒔田ら1988,蒔田、紺野1989,阿部、柴田2007)、スズ タケに関する一斉開花の報告は少ない（林2009)。