甲状腺腫

摘要

甲状腺の診断は触診から始まる.超音波検査が触診所見を裏づけし，触診でわからない情報も与えてくれる.びまん性甲状腺腫は自己免疫性甲状腺疾患が多い.結節性甲状腺腫では手術適応を見逃さないようにする.甲状腺は前頸部皮下にある重量10?20 g程度の小さい臓器である.皮下に存在するので触診しやすく，診察では必ず頸部の触診を習慣づけたい.甲状腺が元の形を保ったまま腫大したものをびまん性甲状腺腫，甲状腺の一部が腫大してしこりを形成したものを結節性甲状腺腫という.甲状腺疾患があれば必ず甲状腺腫を触知するものではないが，甲状腺腫の存在は甲状腺疾患診断の糸口になる.高度の肥満症例や男性で頸が短い場合には触診しにくいときがあるので注意を要する.甲状腺腫を触れる場合には甲状腺腫の大きさ，表面の性状，硬さ，圧痛の有無，結節の場合はさらに占拠部位と可動性の有無を評価する.