血管石灰化のメカニズム

摘要

血管石灰化はこれまで細胞の変性に伴って生じる受動的な現象と考えられてきたが、現在では能動的なプロセスにて形成される病態であると考えられるようになった。血管石灰化の病理には内膜石灰化，中腰石灰化，外膜石灰化，弁膜石灰化があり，それぞれに異なるメカニズムが存在する。骨形成に関わる転写因子Runx2，Msx2の重要性が明らかにされつつある。　冠動脈，頚動脈あるいは大動脈における石灰化は，糖尿病患者や腎透析患者では非常に高率に認められる。長い間，血管石灰化は血管細胞の変性過程におこるカルシウム結晶の受動的な沈着であり，加齢に伴う生理的な現象と考えられていたため，ほとんど研究の対象とならなかった。1990年代に入り骨形成に関わるタンパク質の発現が血管石灰化部分に確認されたことを契機に病態生理を解明する基礎研究が進み，現在では骨形成に類似した能動的な過程と考えられるようになった。また，血管石灰化は，季馴犬硬化の強力な指標であり，石灰化の程度は全粥状硬化病変量と直接関係することから，血管石灰化の分子機序の解明は現在の血管生物学の重要課題である。