中国餅麹（曲）由来の黒色系糸状菌の分離、同定と特性の解析

摘要

わが国の焼酎の原型は泡盛焼酎にあり，その泡盛焼酎の起源については，その製造、蒸留技術がどこからどのように伝播してきたのか，議論はあるが，東南アジア～琉球説が一般的である。その際，東南アジアの酒造りと共に麹もー緒に渡来したとされている。中国で広く酒類製造に使用されている餅麹（曲）は，日本の麹と異なり穀類を粉砕し無蒸煮のまま，適当量の水を加え成形され，自然界の微生物をスターターとして混和製造されている。餅麹の主要微生物は，クモノスカビ属（Rhizopus属），毛カビ属（Mucor属），紅麹カビ属（Monascus属），アスペルギルス属（Aspergillus属）などが報告されているが，他にも数多くのカビ類，酵母類や糸田菌類が含まれており協奏的に酒造りに関与している。餅麹は，わが国の麹と異なり，微生物の生育環境を自然生態系の中に求めており，複雑なミクロフローラを形成しているため，新たな有用微生物発掘の原点でもある。